デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか

デジタル産業革命が生んだ格差をどう解消すべきか
デジタルと人工知能で社会も経済も激変――そんな煽り本はいまや一山いくら。みんな機械に仕事奪われお先真っ暗、大量失業の格差拡大で社会崩壊! 果ては人類を凌駕したシンギュラリティ後に人類と機械の一大決戦などという三文SFまがいの主張すら散見される。そしてその解決策として挙がるのは、機械打倒のラッダイト議論、人間様の心だけは機械にわからないといった無知な手前味噌、あるいは機械に負けないお勉強で抜け駆けをといった目先談義ばかり。
本書は、その視野の総合性も対応案も、そうした志の低い本とは一線を画する。二十世紀初頭も、産業革命で生じた格差を前に、所得の再分配手法の模索が課題だった。いまや再びそれを考えよう、と本書は主張する。

原題は「The Wealth of Humans」ということで、アダム・スミスの国富論(The Wealth of Nations)を意識したものだと思われる。

ビジネス書の日本語訳はどうしていつもこんなにひどいのか。 雇用のトリレンマという概念が面白かった。

  1. 高い生産性と高い給与
  2. 自動化に対する抵抗力
  3. 大量の採用

は二つしか満たせない。

強力な新しいデジタルテクノロジーは巨大な金鉱を掘り当てたかのように莫大な富の源泉になる可能性を秘めている

人間がする仕事のほとんどは本質的にコンピューティングである

実際に高給を出したのは、単調極まりない工場の離職率を抑えるためだ

経済の発展が緩やかな期間が長かったため、私たちの多くが経済の進歩が違うスピードで起こりうることを忘れてしまった

確かに、すくなくとも自分が生きている間、文明は驚くほど停滞しているように思える。ITは進歩したものの、直感として、youtubeで見る1992年の風景は、現代とほとんど変わりがない。